「売建住宅(うりたてじゅうたく)」とは、あらかじめ売主が建設する住宅のプランを提示し、それに基づいて住宅を建てた後に販売する形態のことです。つまり、購入者は完成した住宅を購入するのではなく、建築プランが決まっている段階で契約し、完成を待ってから引き渡される住宅を購入する形態です。
売建住宅の特徴
- 事前プランの提示: 売主が事前に住宅のプランを提示し、そのプランに基づいて建設が進められます。購入者はこのプランを見て契約を結びます。
- 完成前の購入: 住宅が完成する前に契約を結ぶため、建設途中での購入が一般的です。購入者は完成する住宅のイメージを図面やモデルハウスで確認します。
- 価格が確定している: 契約時に住宅の価格が確定しているため、追加費用が発生しにくいのが特徴です。契約後の変更は難しい場合が多いため、事前に詳細を確認することが重要です。
売建住宅のメリット
- 価格の透明性: 契約時に価格が確定しているため、予算管理がしやすく、追加費用の心配が少ないです。
- 設計の手間が省ける: 売主がプランを提供するため、購入者が一から設計を考える必要がなく、手間が省けます。
- 新築の安心感: 新築住宅であるため、最新の設備や技術が反映された住まいが手に入ります。
売建住宅の注意点
- プラン変更の制約: 契約後の設計や仕様変更が難しいため、事前にプラン内容をしっかり確認することが重要です。
- 完成までの待機期間: 契約から完成までに時間がかかるため、引き渡しまでの期間を考慮する必要があります。
なぜ売主は売建で販売するのか
理由は簡単、資金繰りが大きな要因です。
売主(多くは不動産業者)が土地を仕入れ、販売を計画していくとき、土地の仕入れ代金や、建物の建築費用を自己資金で賄うことができれば、建物を先に建ててから販売することが可能となりますが、多くの場合、土地の仕入れに金融機関からの融資を利用することがあります。
そして金融機関は、土地の仕入時の土地代金には融資をしてくれますが、多くの金融機関は建物の建築費用については融資をしてくれません。
そこで買主が確定して、売買契約を締結し、買主の代金が支払われることが確定している状況で、建築を始めていくのです。
売主にとっては、買主から回収した売買代金の一部を利用して、建物の代金を支払うことができますから、資金的なリスクをかなり回避することができます。
建築条件付き土地の契約との違い
建築条件付き土地の売買契約を「売建て」と言ったりすることもありますが、ここでは建築条件付き土地の売買契約とは別の性質として説明をさせていただきます。
建築条件付き土地の場合は、土地の売買契約を先に締結し、その後、建築業者とプランの打ち合わせをして、決められた期限内に”請負契約”が成立しない場合は、無条件に解除ができる(もしくはその時点で土地売買契約が成立する)ことになります。(※土地売買契約を”解除条件”で契約するのか”停止条件”で契約するのかによって違う←これはまたどこかの項目で説明します)
ですから建築条件付き土地の場合、土地の売買契約を締結した時点では、まだ建物のプランが確定していません。
ここで私が説明する売建住宅というのは、すでにその土地に建てる建物の”建築確認済証”がおりている状態で、土地と建物のセットの売買契約を締結したあとに、建物の建築が始まっていくもののことを指します。
建築確認済証がすでに出ているということは、建物の構造や階数、間取りも確定していることになります。ということはつまり、建物の金額も確定できる状況にあります。
なのでここでいう”売建住宅”の場合は、建築条件付き土地の売買契約のように、建物の仕様や大きさによって金額が変動しません。言い換えれば、建築前の”建売住宅”のようなものです。
建築確認までおろしたんだから建ててくれればいいのに、そしたらわかりやすいのに、と思うかもしれませんが、前記の資金的な理由から売建住宅にしているケースが多いと思われます。
また建築条件付き土地の売買契約の場合は、建物の請負契約が成立しない場合は、土地の契約がなかったことになりますから、土地の売買契約が終わってから請負契約が成立するまでの間、売主は、「きちんと請負契約ができるだろうか」とドキドキします。
そういうドキドキの不安定をなくすには、建物の建築確認済証をおろして、土地建物で売買契約することなのです。
まとめ「売建住宅は珍しい」
ここまで書いたことをまとめると、売主が不動産業者だとして、建売じゃなくて売建にするケースというのは、基本的に資金的なリスクを回避することなのですが、売建てにするためには、事前に間取りなどのプランを計画し、建築確認を取らなければいけません。
建築確認を取るには、設計事務所に設計を依頼したうえで、役所に図面を提出して申請をしないといけませんので、その分の費用がかかります。
ざっくり40~50万円はかかると思いますので、資金的なリスクを回避しようとしているのに、その費用を捻出するというのは、なんだか矛盾しているように思えます。
そういうときに資金的なリスクを回避する一番の方法は、土地のまま土地だけで売ってしまうことなんですが、なぜか土地だけで売らずに、建物をつけようとするわけです。
よほど建物をつけて売りたいのでしょうね。
おそらくは、
- 建物分の利益も取りたい
- 資金に余裕はないけど自分の思う建物を建ててみたい
- なかなか土地を仕入れられないので、せっかく仕入れた土地はちょっと頑張って企画してみたい
などなどの業者さんの思惑があるのかもしれません。
一般的に、更地の状態で売られているものは、土地で売っているものか、建築条件付き土地の物が多いです。売建ての物件を見かけたら、ちょっと注目してみて、その業者の思惑を想像するのも面白いかもしれませんね。
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