先日お客様の住宅ローン相談に同行し、そのときに銀行の担当者がお客様に説明しているのを横で聞いていまして、ちょっとおもしろいことを思いついたので、書き記しておきます。
まずは大前提として元利均等と元金均等の仕組みを知って頂く必要がありますので、簡単に説明します。
元利均等返済とは
元利均等返済とは、毎月の返済額(元金+利息)が一定になるように設定された返済方法です。金利が固定の場合は、返済期間中ずっと支払額が変わりません。
毎月の返済額には元金と利息が含まれており、返済の初期は利息の割合が大きく、返済が進むにつれて元金の割合が増えていきます。
イメージはこんな感じです。
元金均等返済とは
元金均等返済とは、毎月の元金の返済額を一定にする返済方法です。総返済額は徐々に減少します。
毎月の返済額のうち、元金部分は一定で、利息部分は減少していきます。返済初期は毎月の返済額が高く、返済が進むにつれて毎月の返済額が減少します。
イメージはこんな感じです。
理屈だけを考えれば
元利均等と元金均等返済の仕組みを知ったときに、その理屈だけを考えれば、誰でも元金が早く減る方がいいに越したことがありませんから、元金均等返済を検討される方はとても多いです。
ですが実際に住宅ローンを組まれる方は、元金均等返済で組まれる方よりも圧倒的に元利均等返済で借りられる方が多くなっています。
なぜか。
それは当初の返済金額の負担が大きくなるために、融資の審査が元利均等返済よりも、元金均等返済のほうが厳しくなるのです。
借り入れできる金額も、同じ年収で考えた場合、元利均等返済のほうがより多く借入可能になります。
つまり物件選びの際にも、元金均等返済の場合は、元利均等返済よりも少し予算を下げなければいけなくなるのです。
物件価格を下げてもご希望どおりの物件があればベストですが、いい物件を見てしまったあとで、予算を下げれないのが人情というものでしょう。
ちょっとでもいい物件を選ぼうとすれば、おのずと元利均等返済の方を選ぶ人が多くなるわけです。
返済額を比較してみよう
仮に3,000万円の借り入れだとします。金利0.5%、返済期間35年の場合で比較してみましょう。
元利均等返済 月々 77,876円
元金均等返済 初回月 83,928円
となります。
元利均等返済は金利電卓やEXCELの関数でないと、手で計算するのは難しいですが、元金均等返済の返済額を求めるのは、手計算でも可能です。
3,000万円を返済月数で割れば、毎月の元金が計算できます。
30,000,000 ÷ 420ヶ月(35年) = 71,428円 (概算として端数は切り捨てました)
そして最初の月の利息を計算します。0.5%は年利なので、3000万円に0.5%をかけたあとに12で割ります。
30,000,000 × 0.5% ÷ 12(ヶ月) = 12,500円
先程の元金と利息を合計します。
71,428 + 12,500 = 83,928円
となるわけです。
次に、翌月の計算をしてみましょう。
翌月の元金は、3,000万円から1回分の元金71,428円が減っていますので、
30,000,000 ー 71,428 = 29,928,572円 が元金となります。
翌月の金利を計算するには前回と同様に計算して、
29,928,572 × 0.5% ÷ 12 = 12,470円 となります。
元金の71,428円と利息12,470円を合わせますと、
71,428 + 12,470 = 83,898円
これが2ヶ月目の返済となります。
1ヶ月目 83,928円
2ヶ月目 83,898円
ということで、1ヶ月目に比べて30円返済額が少なくなりました。
このようにして元金均等返済は、返済額がだんだんと減っていきます。後半になればなるほど、減り方が増えていきます。
セルフで元金均等返済をしてみよう
1ヶ月目の元利均等返済と元金均等返済をもう一度見てみましょう。さらに元金と利息の内訳も示してみます。
元利均等返済 月々 77,876円 (利息12,500円 元金65,376円)
元金均等返済 初回月 83,928円 (利息12,500円 元金71,428円)
ここで注目していただくのは、利息の部分です。
一番初めの支払いの利息の金額は、元利均等返済であっても元金均等返済であっても、金額は同じなのです。
これを利用します。
元金の差額は、
71,428 ー 65,376 = 6,052円 となります。
この6,052円を始めの月の返済に合わせて、繰り上げ返済をするのです。
そうすると、元金の減少が元金均等返済と同じになります。
最近では繰り上げ返済はネットバンキングで出来て、さらに手数料が無料になっていますので、しかも1円から可能というところも増えてきています。
まとめ
本当は元金の減りが早い方の「元金均等返済」で借りたいけど、年収の基準で仕方なく元利均等返済にしているという方には、「セルフ元金均等返済」をおすすめします。
余裕のあるときには、通常の月々の返済に加えて、繰り上げ返済をすれば良し、余裕がないときは、繰り上げ返済をしなくても、約定違反にはなりません。
毎月計算をして元金均等返済と同様の効果を得ることもできますし、全く同じことは無理でも、元金均等返済に近づけることはできるわけです。
インターネットが普及していて、かつ繰り上げ返済の手数料がかからないからことできることなので、ほんのひと昔前は出来なかったことですが、現在では住宅ローンの申込すらスマホでできる時代となりました。
うまく制度を利用して、なるべくなら少しでも負担を減らして有利に住宅ローンを利用したいものです。
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