YouTubeのおすすめで見かけたので、その動画を一応見ていったのですが、なにやら一般のユーザーさんが、
「住宅ローン控除しか狙ってなかった」
「ペアローンにしたのが間違ってた」
みたいなことをおっしゃって、深刻にお話されていましたが、ペアローンで住宅ローン控除を狙ったのが、失敗の原因ではないように思いましたので、ちょっと書いてみました。
住宅ローン控除はペアローンも連帯債務もさほど変わらない?
住宅ローン控除の要件は、
個人が住宅ローン等を利用して、マイホームの新築、取得または増改築等(以下「取得等」といいます。)をし、令和3年12月31日までに自己の居住の用に供した場合で一定の要件の下、その取得等に係る住宅ローン等の年末残高の合計額等を基として計算した金額を、居住の用に供した年分以後の各年分の所得税額から控除(住宅借入金等特別控除)することができます。(国税庁のHPより)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1212.htm
ここでのポイントは、
◯マイホームの新築、取得または増改築等
◯自己の居住の用に供した場合
◯その取得等に係る住宅ローン等
の部分です。
ペアローンの場合を簡単な図で示しますと、
それぞれがそれぞれの持ち分に応じて、住宅ローンを借りています。
先程のポイントにありました「自己の居住の用に供した」「取得等に係る住宅ローン」を満たしていますので、問題ないように見えます。
では連帯債務の場合はどうなるのでしょうか。
同様にイメージ図で示しますと、
連帯債務というのは、それぞれが借入の全部を連帯して債務を負うものですから、図で示すとこのようになります。
で同じようにポイントの部分ですが、「自己の居住の用に供した」「取得等に係る住宅ローン」を検証しますと、以下のようになります。
ちょうど矢印の上に色のついた部分が住宅ローンの対象になります。
以上のことから、ペアローンであっても連帯債務であっても、住宅ローン控除の要件を満たしていれば、同様の控除が受けられることになります。
ペアローンが悪いわけではない
YouTubeでのケースは離婚をするときに「ペアローンが問題になる」ということでしたが、離婚の時に問題になるのは、住宅ローンの借入の名義の問題ではなく、
「共有であること」
が問題なのではないでしょうか。
夫婦の二人共が住宅ローン控除を受けるために、夫婦の共有名義にしたことが問題なのであって、ペアローンが悪いわけではないと思います。
ペアローンと比較されるのが連帯債務ですが、連帯債務であっても住宅ローン控除を受けることが可能ですし、それぞれが住宅ローン控除を受けるためには、連帯債務であっても共有名義にする必要があります。
なぜペアローンや連帯債務で住宅ローンを借りる?
では、そもそもなぜ住宅ローンをペアローンや連帯債務で組むのか?
それは2人の収入を足して借入を多くするためでしょう。1人分よりも2人ぶん借りたほうが、1人で買うよりも高い予算の物件を検討することが出来ます。
住宅ローンを夫だけにしたいのであれば、夫の収入で購入できるだけの予算の物件を選べばいいのに、夫婦の収入を足して購入する理由は、より良い物件を選びたいからなのではありませんか。
離婚をするときに、離婚したどちらかが、新しいパートナーを見つけて、新しく家を購入したい、住宅ローンを組みたいとなったときに、前のパートナーと購入したときの住宅ローンが残っていれば、新しく組む住宅ローンに影響が出ます。
また子供の学校のことで、今住んでいる家をすぐに離れたくない等で、妻が夫の持ち分を購入するケース、逆に夫が妻の持ち分を購入し、妻は夫から借りてその家に住む、というようなケースもあるでしょうが、そもそもギリギリの収入で購入していた場合は、相手方の持分を買い取るためのローンを追加するなど、厳しいものがあります。
そうなってくると、結局は売却することになります。
1人でも購入することはできるけど、2人共が住宅ローン控除を受けたいから、2人の共有名義にして、ペアローンや連帯債務でローンを組んだ場合は、相手方の持ち分を買い取れるだけの余力はあると思いますが、2人の収入を足さないと購入できない物件の場合は、ほかに貯金などの資産がない限りは、相手方の持ち分を買い取ることは困難でしょう。
まとめ
ペアローンが悪いのではなくて、共有で購入するから面倒なことになるのではないですか。
1人の収入で購入できるならば、わざわざ2人の収入を足す必要もありません。
でも離婚をするときに、財産分与をしてもらうのであれば、相手方の資産となる持ち分が多ければ多いほど、たくさんもらえることになりますから、住宅ローン控除の恩恵を受けるのがいいのか、夫1人の名義で購入するのがいいのか、それはあくまでも結果論でしか損得は計算できません。
何事もなく予定通りに進むのが一番ですが、将来のことは予想できるものではありませんので、極力共有を避けたほうが、のちのちの手続きが簡略化されることにはなりますが、夫婦共働きでしたら「それぞれが住宅ローンを公平に負担して購入しよう」となるのもごく自然なことだと思います。
ペアローン(連帯保証・相保証)と連帯債務の違いをよく認識して、なにか問題が起きたときはどうなるのか、ということを前もって勉強しておくしかないのかも知れません。
※ここでは離婚の場合を書いてみましたが、団体信用生命保険についても、ペアローン・連帯債務で違ってきますので、注意が必要です。
こちらの記事もご参考になさってください
コメント